1LDKは「大きな台所」? 簡単な飾り棚でキッチンを仕切ってもいいし、キッチンとダイニングルームをまとめて コンパクトなものとし、リビングだけを飾り棚や引き戸などの可動式間仕切りで区画してもいい。 これだけの工夫で、リビングルームがぐんと落ち着き、ゆったりくつろげる団蕊のLDK……。 いつ、誰が、最初にこう呼んだのか知りませんが、今、日本人の典型的な住まいは、 「3LDK」そのものになってしまいました。 リビングルームは家族の「居間」だという前提でお話ししてきましたが、 ここで一つ、補足しておきたいことがあります。 現在のLDKは、リビング兼ダイニング兼キッチンであると同時に、 個室や各ファシリティ(トイレ、浴室などの機能設備)をつなぐ媒体的空間でもあります。 つまり、リビングルームそれ自体が明確な機能をもっているわけではなく、 それだけで完結しているわけでもない。 むしろ、形のないフレキシブルな公共空間です。そうした設計思想自体は、正解だと思います。 あいまいな媒体空間が存在するほうが、うんと自由な設計が可能だし、家族関係のよい住まいになるからです。 ところが実際には、そうした位置づけが悪い方向で作用してしまったのでしょうか。 現実の大泉学園の中古一戸建てでLDKを見ると、媒体空間が極度に狭められ、なかば通り道のように使われていることがあります。 せっかくのリピングルームも、個室への通り道ではますます落ち着かず、くつろげない場所となってしまいます。 私の見るところ、歪みは結局、大切な家族の居る「場」であるリビングルームに集中してきます。 存在主張の強い「K」に押されて、リピングルームまでひっくるめたLDK全体が 「大きな台所」のようになってしまうのです。 もともと「飯をつくる」という堂々たる機能を備えていたキッチンが、 今やさらに強いインパクトをもつようになりました。 豪華なシステムキッチンを備え付けたりすると、その色調やデザインによっては、 LDK全体がシステムキッチンのイメージ一色になってしまいます。 加えて、キッチンには匂いがあります。料理をする音もあります。 煙が充満したり、油が飛び散ることもあります。 キッチン・スペースが狭ければ、料理道具が少しずつダイニング・スペースを占拠し、 食器棚がリビングルームまで侵食していきます。 やがて、電気釜がリビングのソファの上にあることすら、自然になってしまうのです。 最近では、寝室や子ども部屋といった個室は別として、LDKではできるだけ仕切りを取り払い、 オープンな空間を好む人が主流です。 「家全体が狭いのだから、せめてリビングルームだけでも明るく、広々と」という気持ちは、わからなくはありません。 でも、肝心のリピングルームが、キッチンに侵食されてごちゃごちゃした煩雑な場所となってしまうようでは、 「大きな台所」と変わりありません。 私はむしろ、狭いからこそ、区画することを考えるほうがいいと思うのです。 広さは今の住宅と同じでも、使い勝手ははるかによかったわけです。現代のLDKとの決定的な違いは、 構造においても歴然としています。 かって日本の家は、固定した間仕切りが少なく、内部と外部がほとんど一体化していたため、 広間三間型であっても、内部は広々と感じられました。 今日の2LDKはどうでしょう。まさしくコンクリートの箱で、その外郭は身動きもなりません。 内部も壁とドアでがっちりと仕切られています。閉ざされた箱のなかで、いかにして生活の「場」を確保していくか。 これが、現在の小住宅においては、住まい方の最大のポイントとなっているのです。 私は、この考え方のほうが正解だと思います。LDKが広ければ、個室は狭くても共有スペースが広く、心地よいものとなりますから、 その分だけ家族の集まる機会が多くなるはずで広くなったLDKで、家族がそれぞれ自分のやりたいことをやればいいのです。 なにも、家族が心を一つにして語り合ったり、同じテレビ番組に見入ることだけが団薬であるとは思いません。 団築とは家族が「自由に、いっしょにいる」こと? 私は昔、自分の住んでいた「2LDK」と、かっての代表的な民家の間取りである「広間三問型」を比較分析してみたことがあります。 その結果、面白い事実に気づきました。 面積も、間取りもパターンも、非常によく似ているのです。 土間のかまどがキッチンに姿を変えただけで、間取りはほとんど同じと言っていいでしょう。 ところが、そこでの住まい方となると、まったく違います。 かっての広間三間型では、両親だけが「納戸」という閉ざされた個室で寝起きし、 子どもたざこれちはその部屋を取り巻くようにして、座敷や広間で雑魚寝していました。 「親」たるもの、プライバシーにおいても、威厳においても、確たるものであったと想像されます。 今日の2LDKで、子どもたちが個室を確保しながら、親のほうがリビングの片隅で寝る状況とは対照的で昔の日本の小住宅は、 目的別の部屋、つまり「間」を配置するといった発想よりも、寝る場所、 食べる場所といった「場」を確保する発想でつくられていました。 しかも、一つ一つの「場」が、あるときは食堂となり、あるときは子どもの寝室になるという具合で、融通性に富みません。 そんなことをめざしても無理が来るだけです。 それよりも、家族が自由気ままに過ごせること。それぞれ好きなことができること。 ただし、いっしょにいること。つねに互いの姿が視野の中にあり、存在を感じ合えること。 つまり、さりげなく自然にいっしょにいること。そうして、家族の一人一人が心地よい自分の「場」をもてること。 私は、LDKをそんな空間にしなければならないと考えています。昔の日本の民家には、 真ん中に囲炉裏や矩健があり、自然と家族が集まってきました。 そこで父親はちびりちびりと酒を飲み、母親は繕いものをする。娘は本を読み、息子は絵を描く。 今日なら、父親はリビングルームの片隅のコーナーで帆船モデルをつくり、母親はパッチワークにいそしむ。 娘はヘッドフォンステレオで音楽を聴き、息子はパソコンに向かう。あるいは、父親が新聞を読んでいる隣で、子どもたちが宿題をする。 それぞれ好き勝手なことに熱中しているようでも、やはり家族がともにある。これこそがほほ笑ましい団薬の図だと言えないでしょうか。
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